Super Juniorに見る 「アイドル」の形
アイドルとはこうあるべきだ
という定義自体が薄れつつある現代。それは良くも悪くも今のアイドル文化に様々な影響を与えていると思う。
例えば曲。今のアイドルはなんでもやる。
とくにK-POPの音楽の幅は広い。音源に対する捉え方も日本とは大きく違うので、完全に大衆性からかけ離れた音楽も山ほど。
あたしがK-POPにハマったのが割と近年なので、もうこの頃には既に
アイドルがやる必要あります?
と突っ込みたくなるほどハイセンスな楽曲の数々がたくさん生み出されていた。
そういうのを聴くのは楽しかった。というか、そういうしか知らなかったのだから無理もない。
しかし、ここにきて「アイドルとはこうあるべきだ」の代名詞となるようなグループ、そしてその曲たちに出会ってしまう。
紹介させていただきたい。
Super Junior
Super Juniorとの出会いは K-POPに全く興味のない友人との会話だった。
彼女のクラスメイトが、ある日ずっと泣いていたという。その理由こそが「Super Juniorのメンバーの入隊」だったらしい。その話を聞いて、はじめてあたしはSuper Juniorを知った。
もう入隊するようなメンバーのいるグループもあるんだなーと当時はそれしか思わなかったし、Super Juniorについては全く知らなかった。ソリソリをやってる人達、という知識しかなかった。(話を聞いた時期から推測するにそのクラスメイトはリョウクかキュヒョンペンかな?)
で。最近の話。
カムバック、するらしいじゃないか。
と、知る。
古くからの彼らを知っている訳では無いから、周りのファンのように「おかえり」と声をかけることはできなかった。
それなのに、なんだろう。この感慨深さ、、
彼らが長い間活動を続けるグループだということだけはわかる。毎日のように新しいグループが生まれては忘れられ、売れたい、売れたい、、と必死の形相で様々な曲を歌い、踊る世界で、
なんだか飄々と戻ってきたように見えた。
もちろん、ハマっていくにつれ、リアリティ番組とか視聴したから、、彼らがここに帰ってくるまでの経過がそんな楽なものではなかったのもひしひしと感じることが出来た。
だからこそ、
Super Juniorは、すごいよ。
やっと本題に戻ろう。Super Juniorというグループは、ヒップホップグループでもなければダンスチームでもない。ましてや男性ボーカルグループでもなく、
彼らはアイドルなのだ。
Super Juniorを知る上で、まず聴いていただきたい曲がある。
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 '행복' MV - YouTube
Super Junior - Happiness
「幸せ」というタイトルの1曲。かなりツッコミどころの多いMVだけどこれは時代だからね。(笑)
どこがすごいって、全員アイドルしてる。完璧なアイドルの理想像がここにある。決めポーズをとり、投げキスを飛ばし、時たまコミカルな表情を見せ、与えられた歌を一生懸命歌い、必死にダンスを踊る。それでも満面の笑顔だけは忘れない。
当時のSuper Juniorは、決して個人のポテンシャルは高くなかったと思う。聴いてもらえばわかるように、歌は下手くそだし、ダンスもバラバラ。
Super Juniorのメンバーはどんどんここから成長したわけだし、今となっては強いボーカリストをたくさん抱えるグループだ。
それにしてもやはり、目の覚めるようなラップとかキレッキレの揃った群舞とかそういったものとは未だ無縁。これから紹介させていただくどの曲も、「かっこいいのにちょっとおマヌケ」なエッセンスが散りばめられている。
「未だ」と書いたが、あたしはSuper Juniorがそのようなグループにこの先進化することを特別望んでいない。
Happinessを見終わったあとの、この「あー、、しあわせだ、、」という気持ち。アイドルって、こういうものだよなぁ、としみじみ宙を見上げてしまった。
というわけで
ここからはSuper JuniorのMVを見ていきたいと思います
Super Juniorには大きく大きく大雑把に分けて2つのタイプの既存曲がある。
ひとつは、Super Juniorといえばこういった、テクノサウンド系。こちらは圧倒的に他と比べ曲の情報量が少ない。故に良く言えば耳に残りやすく中毒性がある。悪く言えばこの手のものはすべて同じ曲に聞こえる。
代表曲sorry sorry 、BONAMANA 、セクフリ 、、などなどはこちらに分類。
「Sorry Sorry」より
メンバーの顔とダンスシーンのみを白黒で見せる簡単な映像がこの手の曲たちのMVの特徴
「BONAMANA」より
こちらもソリソリと構成が全く同じ。これもよく売れたみたいです
「A-cha」より
後ほど紹介します。是非見ていただきたい。
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 'Mr. Simple' MV - YouTube
Super Junior - Mr simple
続いて、
トレンディ系。ちょっとレトロでウエスタンな雰囲気のMV。
テクノサウンド系と大きく違うところは、若干のストーリー仕立てになっていること。(SPY除く)
「SPY」より
こちらに入れるべきか迷ったけど。トレンディだね。
「Devil」より
映像技術が進歩してから、こういったMVが増えたんだよね。
「MAMACITA」より
何故かこのシーンですまん。これはお金かかってました!
「Magic」より
レトロでふわふわで、こちらも多幸感に溢れた作り。このメンバーが一番好きだなぁ
「Black suit」より
最新曲。まさしくこのパターンできたな、というMV
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 'MAMACITA (아야야)' MV - YouTube
「MAMACITA」
このほかにも「センチメンタル系」とか「コメディ系」(Magicやママシタはここにも入るだろうなぁと思ったけど どちらかというとコメディ系はパジャマとか料理王とかそっちを分類したい)などなど各種取り揃えているSuper Juniorですが、大きくわけたこのジャンルでお話したい。
- 近年のK-POP との違い
最近爆売れしているK-POPと言えば(ボーイズグループに絞らせていただく。)、防弾少年団がやはり主でしょう。
彼らがなぜ売れたかというならば、
「ストーリーのあるMV、世界観」を取り入れたから
だと思う。デビュー作から数作目まではヒップホップ色が濃く出た作品を発表し続けていたが、花様年華シリーズから一気にその人気が突出した。嫌な言い方になってしまうが、彼らはそこである意味「防弾少年団」を殺したのだ。そして新しい「防弾少年団」として成功したわけだが、既に「ヒップホップグループとしての防弾少年団」はいない。よしとするのかは本人達にしかわからないけど、その路線変更は事実大正解した。
他グループも、花様年華シリーズのようなストーリー仕立てのMVで作品を作っているところが多くなってきたと思う。
[MV] 몬스타엑스 (MONSTA X) _ 걸어 (ALL IN) - YouTube
MONSTA-X - All In
代表として上げたい。このMVはダンスシーンが一秒もない。
映画のように作り込まれた世界観の中でメンバー達が生きている。こういったMVは、なんせ見ていて飽きない。あたし自身これを初めて見た時はまんまと没頭してしまった。初見のグループの曲なのに早送りする、という発想がなかった。(あたしにしては珍しいことであるよ)
他にもこの手のMVは色々あるが、完全にダンスシーンを排除したものは数少ない。
何が言いたいかというと、Super Juniorはこれをしない。
なんだよ、あるじゃないか!ブラックスーツだってそうじゃないか!と反論を受けそうだが、基本的に彼らのそういったMVの中での演技はあくまでも「MVの中の、曲の一部としての」演技であり、(ママシタは除くが、、)ブラックスーツも、のらこも、リップシンクのための演技でしかないとあたしは思っている。
これが何に影響するか。
曲がすんなり頭に入ってくる。
ストーリー風MVはものの4分強という短い時間で、それこそ映画を見たようなどっしりとした映像に仕上がる。基本的にアイドルとして歌って踊っているメンバーがここでは演技をしている、という点でも非常にファン心をくすぐる表現方法だと思う。
しかし、度をすぎた脚本を演じさせると、全く曲が入ってこない。見終えた後、で?どんな曲だったっけ?となる。(正にmonsta xのallinがそれで、ストーリーしか覚えていなかった)
ストーリー風MVの弱点。それはアイドルとして一番全面に出さなくてはならないはずの「ダンス」と「歌」の見どころを隠してしまうことだと思う。
- Sorry Sorry 、 BONAMANA はなぜ売れたか
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 '쏘리 쏘리 (SORRY, SORRY)' MV - YouTube
「Sorry Sorry」 (2009)
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 '미인아 (Bonamana)' MV - YouTube
「BONAMANA」 (2010)
Super Juniorの代表作中の代表作。Super Juniorを知らなくてもソリソリは知ってる方も多いでしょう。今やいろんな若手グループがカバーステージやったりしてるからね。
あたしもセブチに入れ込んでた頃にソリソリのカバーステージを見て「なんだこの曲!このダンス!」と驚愕した。
後にソリソリの翌年に発表されたボナマナ(美人)という曲も見つけることになるのだが、これは
ほぼソリソリ。
あたしはボナマナ派!
この2曲がすげー売れたらしい。万一、まだ聴いたことない方がいたら騙されたと思ってMV見てください。途中飛ばしても構わない。つまらないMVだから。(笑)
難しくないMVだ。たぶん赤ちゃんでも猿でも犬でも理解できる。男が何人もいて、それがみんな変な踊りをしている。ただそれだけ。ただボーーーーーっとしながら画面を見ていられる。ソリソリとボナマナが売れた理由のひとつはこれだと思う。
聴いてもらえばわかるけど、初見の1発でもうワンフレーズ歌えると思います。ほかのどの曲よりも、「叩き込まれ度」が高い。気づいたら口ずさんでいた、というK-POPあるあるな中毒症状の代表例ではないだろうか?
シンプルイズベスト。
結局長く愛されるアイドルソングというものはシンプルな画面、ダンスシーンのあるMVで売られることが多い。と思う。
- 代表例
Girls' Generation 소녀시대 'Gee' MV - YouTube
少女時代 - 「GEE」
BEAST - 'FICTION' (Official Music Video) - YouTube
BEAST - 「FICTION」
この手のものは異性に猛烈にアピってるか、激しく振られて悲しみに打ちひしがれているかの何らかの大まかなストーリはあるにしろ、そのストーリーに重要性はなく、まあ要はダンス見てくれ!的なMVになっている。ソリソリやボナマナはそれすらもないけど。
BIGBANG - FANTASTIC BABY M/V - YouTube
BIGBANG - 「Fantastic Baby」
まあこういう↑例外もあるわけだけど。しかしこれもドラマ風ではないよね。顔を交互に映していくスタイルの単純明快なMVであることは確か。
- これが「アイドル」、「Super Junior」
Super Juniorに戻る。先程MVをざっと紹介した中で、テクノサウンド系に分類される1曲、「A-cha」について語らせていただきたい。
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 'A-CHA' MV - YouTube
Super Junior - 「A-cha」
敢えて歌詞とかそうゆうことについては言及しないでおくね。MVに注目します。
初っ端は全員の立ち姿から始まるMV。ダンスメインってことが一発で分かる。そしてSuper Juniorのこの手のMVにありがちな、単一色背景。キラキラしてたりしてなかったり。結局色々見て思うのは、この背景が一番アイドルをアイドルらしく、かっこよく見せるのでは、という。
この曲、出だしから心を奪われてしまった。
目に飛び込んでくるメンバーの寄りカット。このふたりは別撮影(ヒチョル兵役、シウォン別スケジュール)のようなんだけど、あたしは初見では全く気づかなかった。違和感なし。
あたしはアイドルのMVにおけるリップシンクが非常に好きで、これはもうそればっかの映像だから、好きな方はほんとに興奮すると思う。
めくるめくリップシンク。最高か、、
MVや静止画のいいところは肌もつるつるになるし実物より顔もシャープになるし、限りなく虚像に近づくところだと思う。現実離れした顔立ちの男達が歌って踊っている。それがアイドルの醍醐味じゃないか。(もちろんライブも大好きですけれど)
いかん。本題に戻る!
この手のMVの非常にいいところ。それは引きと寄りのカットを交互に示すことで、ここのパートではこのメンバーがセンターなのだな、この声はこのメンバーのものなのか。という情報を簡単に与えてくれること。これはドラマ風MVでは得られない。もっとわかりやすいのは曲によってアップされている「パフォーマンスバージョン」だが、そちらは顔のアップがほぼないものが多いので少々見応えに欠けるかもしれない。(ソリソリ/ボナマナより暇かも)
いくつかのアングルで撮られるダンスシーン。やっぱり下から見るダンスはかっこいいよなぁ。(足も長く見えるし)
白背景にオールブラックの衣装。引き締まった絵面がもう、古き良きK-POPアイドルのMV!といった感じでそそられる、、。
黒背景のダンスシーンもご用意。(リョウク、出遅れちゃった人みたいになってる。ごめん)
衣装は白、黒、加えて赤メイン。白黒赤って、アイドル衣装に関しては超無難カラーだと思う。
シンプルすぎのように見える画面構成だが、よく見れば衣装との組み合わせや、バックのライト、オブジェ(?)などなど、非常に良く考えられて作られているのがわかる映像だ。
「いかにSuper Juniorの顔と、ダンスをかっこよく見せるか」が念頭に置かれている。そう、それがいい。だって彼らはアイドルだから。顔とダンスをかっこよく、美しく見せることが本来のアイドルの姿なのではないか。
- ダンスメイン、かつ吸い込まれるような魅力を映すSuper JuniorのMV達
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 'THIS IS LOVE' MV - YouTube
Super Junior - 「THIS IS LOVE」
SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 'Magic' MV - YouTube
Super Junior - 「Magic」
SUPER JUNIOR-M 슈퍼주니어-M 'SWING' MV (KOR Ver.) - YouTube
Super Junior - 「Swing」
ざっとあげてこれらの共通点。それは動くカメラだ。
ダンスシーンはもちろんそれに加えて、躍動するメンバーを追うカメラによって「近さ」を感じられるタイプのMVを集めてみた。「A-cha」の定点カメラの寄りカットよりも更にメンバーがかっこよく写っている。お決まりの構図としてはこちらに向かって指を指したり徴発的なポーズや表情を決めるメンバー。
Super Junior - 「Black Suit」より
SEVENTEEN - 「CLAP」より
他グループでも、定点ではなく移動式カメラで撮影した臨場感のあるMVが多数。
[MV] PRISTIN(프리스틴) _ WE LIKE - YouTube
PRISTIN - 「WE LIKE」
映されるメンバーはこの時もちろんリップシンクをしていて(しつこいくらい重要なところ)本当に見ていて、「軽やか」!
この雰囲気にやられてリピート再生してしまう曲も多い。なんなら酔うくらいカメラは動かしていってほしい。こういう撮られ方はアイドル側も予測不能な分、「予想外の表情」、「ちょっと抜けた表情」を捉えることが出来ると思う。
Super Junior - 「Swing」より
イケメンしかいねえオフィス の日常を覗いているかのようなカメラワーク。ファンからしたら「神のカメラ」と呼んでもいいほどいい仕事をする動くカメラでは、女子グループでは「まるで秘密の花園を見ている感じ」を表現できるし、正にこういう映し方のMVは志向。
冒頭にたくさん貼り付けしたように、Super JuniorのMVはこのカメラワークが頻出する。もちろん、ダンスも忘れない。
- わかりやすくアイドルをするSuper Junior (まとめ)
前でも述べたように、Super Juniorはダンスグループでもなければ歌手でもない。
こういう言い方をしたら、一部のメンバーには申し訳ないが、彼らは生粋のアイドルグループであり、それ以外の何物でもない。
だからこそあたしは彼らに惹かれた。
昨今、色々なアイドルグループが、「アイドルらしからぬ〇〇」を求めるようになったと思感じている。そしてそれが評価される世界に変わってきている。ファンという生態が、アイドル離れしたパフォーマンスを楽しむようになってきているんだろうな。
それでも。それでも!
「歌もダンスも大してキレがないけど、とにかくかっこいい、かわいい子達が、歌って踊ってファンに愛嬌を振りまいてる!」
そんなグループがいつまでもあってくれることをあたしは願い続けるからな。